商船三井(9104)の最新決算(2026年3月期 中間期)が発表されました。
結果は「減収・大幅減益」。 特に、経常利益は前年同期と比べて ▲54.3% と、半分以下に落ち込む厳しい内容となり、市場の「市況ピークアウト懸念」を裏付ける形となりました。
「なぜこんなに利益が減ったのか?」 「株価はもう上がらないのか?」
そんな疑問を持つ投資家の皆さまのために、今回の決算の「本当の理由」と、今後の株価の行方について分かりやすく解説します。
1. なぜ? 営業利益(-19%)より経常利益(-54%)の落ち込みが激しい理由
今回の決算で最も注目すべき点は、利益の「減り方」です。
- 営業利益(本業の儲け):718億円(前年同期比 ▲19.6%)
- 経常利益(本業+αの儲け):1,146億円(同 ▲54.3%)
営業利益の落ち込み(約2割減)に対し、経常利益は(5割以上減)と、異常なほど落ち込んでいます。
この差を生んだ最大の要因、それは「コンテナ船事業(ONE社)」の失速です。

答えは「持分法(もちぶんほう)」にあり
商船三井のコンテナ船事業は、日本郵船・川崎汽船と共同で設立した「Ocean Network Express (ONE)」という会社(持分法適用会社)が運営しています。
このONE社の業績は、商船三井の「営業利益」には含まれず、その下の「営業外収益(経常利益の内訳)」として計上されます。
- 去年まで(好景気):コンテナバブルでONE社が爆発的に儲かり、商船三井の経常利益を大きく押し上げていた。
- 今期(市況悪化):コンテナ市況が悪化し、ONE社の利益が激減。その結果、商船三井の経常利益も直撃を受けた。
つまり、「本業(営業利益)の落ち込み以上に、コンテナ船事業(営業外)の落ち込みがヤバかった」というのが、今回の大幅減益のカラクリです。
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もう一つの大きなマイナス要因が「為替(円高)」です。
今回の決算期間の平均レートは 1ドル=146.09円 で、前年同期(149.80円)と比べて「円高」が進みました。
商船三井のような海運企業は、運賃収入の多くがドル建てです。そのため、円高(ドル安)になると、日本円に換算したときの売上や利益が目減りしてしまいます。
海運株のキホン:
- 円高 = 業績にマイナス
- 円安 = 業績にプラス
船舶燃料の価格が下がったこと(US$546/MT)はコスト減としてプラスに働きましたが、この「コンテナ市況の悪化」と「円高」という2大逆風を打ち消すには至りませんでした。
3. 市場の反応と今後の株価見通し
市場:「やっぱりピークは過ぎたか…」
市場はかねてから「海運市況のピークアウト(天井)」を警戒していました。今回の決算は、その懸念が数字としてハッキリと確認された形です。
商船三井のような「サイクル株(景気敏感株)」は、業績が絶好調に見えても「これがピークだ」と市場が判断すると、株価は市況の悪化を先取りして下がり始める傾向があります。
短期的な株価(~12ヶ月)
正直なところ、短期的な上昇は期待しづらい局面です。
大幅減益という事実に加え、今後の市況回復にも不透明感があり、明確な買い材料に乏しい状況です。株価は「横ばい」か、市況悪化が続けば「下値を探る」展開も想定されます。
「配当利回りが高いから」という理由だけで安易に手を出すと、株価そのものの下落によって損失を被るリスクがあります。
4. 長期的な「逆転シナリオ」はあるか?
短期的には厳しい状況ですが、商船三井もただ手をこまねいているわけではありません。
市況に左右されやすいコンテナ船事業への依存度を下げ、より安定的に稼げる分野への投資を進めています。
- LNG(液化天然ガス)船:エネルギー転換の移行期に需要が堅調な分野。
- 環境対応船(エコ船):世界の環境規制(IMO)強化に伴い、新燃料船や高効率船の需要が拡大。
- 高付加価値輸送:ケミカルタンカーや自動車船など、専門性が高く安定した需要が見込める分野。
これらの「高付加価値」な分野が、コンテナ船の落ち込みをカバーし、次の収益の柱として育つかどうかが、中長期的な復活のカギとなります。
ただし、これらの事業が本格的に収益貢献するには、まだ時間がかかると見られます。
5. まとめ:投資家はどう動くべきか?
今回の決算から読み取れることをまとめます。
- 大幅減益の主因は「コンテナ船事業(持分法)」の失速。
- 「円高」も業績の逆風となった。
- 市場の「ピークアウト懸念」が現実となり、株価は短期的には厳しい。
投資スタンスとしては、「中立・状況注視」が妥当でしょう。
慌てて買い向かったり、ナンピン買いを入れたりするにはリスクが高い局面です。海運サイクルの「低位滞留」が長引く可能性も十分にあります。
中長期的な投資を考えるなら、
- コンテナ市況や世界の荷動きが「底を打つ」タイミング
- LNG船や環境対応船といった「新分野」の収益化が本格化するタイミング
この「転換点」がいつ訪れるのかを、じっくりと見極めるフェーズと言えるでしょう。
本記事は、公開情報に基づき決算内容を分析したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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